米中貿易摩擦が再燃、世界市場に緊張感。2025年4月16日、中国の経済データが市場予想を上回り一時的な安心感をもたらしたものの、オーストラリアS&P/ASX200指数は最終的に2.8ポイント安の7758.9で取引を終了。市場心理を圧迫したのは、トランプ大統領が発表した新たな半導体輸出規制。これによりテクノロジー株が一斉に下落した。
米国の半導体大手Nvidiaは、対中輸出事業で最大55億米ドル(約87億豪ドル)の損失が発生する可能性があると明らかにし、時間外取引で株価が急落。このニュースは、世界的な半導体サプライチェーンの安定性やテック株の評価に対する不安を増幅させた。

▲ Nvidiaが直撃、テック株全体に波及
Nvidiaは初めて、中国向け高性能GPUが新たな輸出規制により大きな影響を受けることを認めた。同社は以前、規制回避のために「H20」チップを開発していたが、今回の規制は市場予想を大きく上回る厳しさで、中国市場での成長見通しに対する投資家の見方が変化した。
この動きはテクノロジーセクター全体に波及:
• 米国株式市場では、半導体関連株が時間外で下落、ナスダック指数も軟調;
• アジア太平洋地域のテック株も軒並み下落し、ASXでは半導体材料やIT関連サービス企業が調整局面;
• リスク回避の動きから金価格は約2%上昇。
▲ ASX指数は小幅変動も、業種間で明暗分かれる
ASX全体の下げ幅は限定的だったが、セクター別には明確な分化が見られた:
• 成長型テクノロジー株は大幅下落;
• 資源・金関連株はリスク回避資金の流入で上昇;
• Star Entertainmentのような娯楽関連株は、個別材料で大きく変動。
豪州株式市場は、米国の政策転換など国際的な動きに対して以前にも増して敏感になっており、とりわけ対中依存や輸出志向のテック企業に大きな影響を与えている。
▲ トランプ政権の規制強化、米中関係が最大の不確実要因に
今回の規制は、AIチップや高性能GPUにとどまらず、クラウドコンピューティングや自動運転などの技術分野にも拡大する可能性がある。国家安全保障と技術覇権を結びつけるこの政策路線は、世界のテック産業構造に深刻な再編リスクをもたらす。
ホワイトハウスは「中国との対話の意思がある」と述べているものの、実質的な交渉は進んでおらず、「言葉は和らげるが、行動は厳格」という状況が続いており、企業や投資家にとって明確な戦略を立てにくい状態が続いている。
• 投資戦略:構造的チャンスを捉え、短期的な政策リスクを回避
不確実性が高まる環境下では、資産配分を戦略的に見直すことが求められる:
① 半導体・AIセクターの評価には慎重に
短期的には政策リスクが高く、「国産代替」や「サプライチェーン多様化」に恩恵を受ける中堅テック企業に注目。
② 金・防衛・サイバーセキュリティといった安全資産セクターに注目
地政学的リスクの高まりにより、これらのセクターが一時的な評価修復を受ける可能性あり。
③ グローバルな視点でドル建て資産の比重を強化
地域・通貨を分散させたポートフォリオは、相場の乱高下に対してより高い耐性を持つ。
▲ 結び:リスクの顕在化は、価値再評価のチャンスにも
Nvidiaが直面する87億豪ドル規模の輸出損失は、グローバルなテック産業の構図が大きく変わる可能性を示唆している。投資家にとっては、これはリスクが表面化する局面であると同時に、新たな成長分野
を見出し、中長期的な価値を見直す好機でもある。不透明な市場環境だが、チャンスは存在する。混乱の中で方向を見極められる者こそが、次の勝者となる。